折坂悠太による初の展覧会である「薮IN」が、本日5月13日(金)より5月30日(月)までの間、渋谷のPARCO MUSEUM TOKYOにて開催されます。開催に先がけて行った内覧会の様子をレポートします。
これまでに「平成」、「心理」といった音楽作品のほか、映画の劇伴音楽やCM曲を手がけるなど活躍の幅を広げている折坂が、新たな表現として、展覧会を初開催。彼のこれまでの音楽作品群と並べて、最新作という位置付けで発表された今回の折坂悠太展「薮IN」は、タイトルにもあるように「薮」をテーマとしたものとなっていて、エントランスから中は黒く覆われ、ブラックボックスのようになっています。
会場に入ってすぐ位置するのは「360 Reality Audio Room」。折坂の最新作アルバム「心理」と昨年開催されたホールツアーのライブ音源が、まるで360度全方位から鳴っているような立体音響体験できるスペースとなっています。部屋の四方にスピーカーが設置され、3壁面を使ってプロジェクションされた映像とともに高音質での臨場感が楽しめ、今回の展示の主役である折坂がどういった音楽家であるかのイントロダクションとなっています。
「360 Reality Audio Room」を出て、壁に書かれた「薮IN」の文字とともに本展示が始まります。折坂による手書きのステートメントが本企画の主旨を伝えるとともに、直筆の文字の先に配されている鏡が、これから薮に入っていく自身の姿を映し出します。明滅する頼りない街灯の下を進んだ先には、実際の薮に分け入っていく折坂を捉えた映像作品が展示されています。映像を横目に暗がりの道をさらに歩いていくと、草木が擦れる音と鼻歌がどこからか聴こえてきます。なおも暗い坂道を緩やかに登っていくと、いよいよPARCOの一角とは思えないような、薮が待ち構えています。
詳しい薮の様相は、実際に来場しての体験をお勧めするとして、内覧会では、会期中も何度か不定期に行うという、折坂によるインスタレーションのパフォーマンスも行いました。薮内にある流木で組まれたやぐらの下に胡座をかいた折坂は、さまざまな声の表現を用いながら、薮の自然音とのセッションを行なっていきます。おそらくは今回の展示に寄せて書いたと思われる詩の朗読も交えながら、パフォーマンスも変化していきます。折坂は演奏後、今回の展示について「一体どのように説明すればよいか今日まで考えてきましたが、あんまりそれを言葉にしたり、あまりにも上手いことを言えたら、失敗なんだと思います」とし、「会期中、薮は変わっていきますし、私も変わっていきます。世界も変わっていくし、皆さんも変わっていくんだと思います。そういう変化をみんなで楽しめたらいいんじゃないかと思います」と口にしました。
今回の展覧会に合わせて、折坂初の書籍作品「薮IN」も会場にて先行販売を行います。今回の展覧会の着想ともなった同名の短編小説「薮IN」を含む全7編の作品と3つのコラムが全編書き下ろしで収録されています。いわば、この展覧会の対となるようなこの書物も、より展示内容を楽しむ上での手がかりとなるでしょう。書籍作品「薮IN」の一般発売は6月1日(水)を予定しています。