演出・上村聡史さん、出演・益岡徹さん、戸次重幸による舞台「A・NUMBER」が、10月7日 (金)に東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕しました。
「A・NUMBER」は、現代イギリスで最も偉大な劇作家・キャリル・チャーチルが手掛け、2002年にロンドン・ロイヤルコート・シアターで初演された話題作。マイケル・ガンボン、ダニエル・クレイブ、サム・シェパードら、数々の名優が演じ、2022年にローレンス・オリヴィエ賞のリバイバル部門にノミネートされるなど、初演から20年経ったいまも注目を浴び続けています。「私は誰なのか。不条理なものと未来的なもの、普段、親しんでいるものが、突然、砕けちる時、人は何を思うのか」人間の尊厳と価値観を鋭く描きだした本作、約70分のなかに流れる濃密な時間にご期待ください。
クローン技術が進み、人間のクローンをつくることは技術的には可能ながら、法的にはグレーゾーンにあたるという近未来を舞台に、自分がクローンであることを知った息子を戸次重幸が、亡くなった実の息子を取り戻したくて医療機関に息子のクローンをつくり出してもらったという父を益岡徹さんが演じます。医療機関が勝手につくった複数のクローンがいるという現実や、自分がクローンであることに葛藤する息子、何かを隠している様子の父、さらに実の息子は生きていた。同じ遺伝子を持ちながらも異なる環境で育ち、雰囲気や考え方が全く違う3人の息子たちと父との会話を通じて、親子という関係、自らの存在や価値と改めて向き合うような作品となっています。
「A・NUMBER」は、10月16日(日)まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演。その後、名古屋、仙台、札幌、兵庫を回ります。さらに、ライブ配信の実施が決定。劇場でご覧になった方、これから観劇される方、劇場に足を運ぶことが難しい方も、配信でお楽しみください。
戸次重幸 コメント
私が演じる3 人の息子たちは、遺伝子が同じでも性格が違って、益岡さん演じる父親とそれぞれが異なる親子関係になっています。僕自身、ある息子を演じているときに、父親だと思って接しているからこそ、声が大きくなるし、涙も出る。そういった部分がこの作品の魅力だと思います。益岡さん以外の人がソルターを演じることが想像できないぐらい、2 人で一緒になって1 シーン1 シーンを作ってきた自信と自負があります。あと、膨大なセリフ量、かつ難解な芝居である「A・NUMBER」で、48 歳の戸次重幸と66 歳の益岡徹さんが役者の限界に挑戦していることも見どころかもしれません。お客様にとっても少し難しい内容かもしれませんが、何とか都合をつけて2 回以上観て頂きたいです(笑)。それだけの価値がありますし、噛めば噛むほど味の出る、見れば見るほど理解が深まる作品になっています。紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA は客席と舞台の距離も近いので、舞台を肌で感じに来てください。
©岡 千里