「感動だけが、人の心を撃ち抜ける」アミューズはこの理念のもと、これまでにさまざまなエンターテインメントやコンテンツを世の中に届けてきました。
しかし、私たちが注力してきたものはそれだけではありません。アミューズは1990年代から、あらゆる人が心からエンターテインメントを楽しめる世界をつくるために、時代・場所・性別・思想を超えて「誰もがより良く生きられる自由」を追求しながら、多彩な社会貢献活動を展開してきました。
そのうちの1つが、"ヤング・ダボス会議"とも呼ばれる、若手人材による世界最大級の国際フォーラム「One Young World Summit(以下、OYW)」への自社アーティストや社員、一般公募枠での参加者の派遣です。2015年から続けているこの取り組みに、2024年度はアーティスト1名、社員2名、一般公募枠1名の計4名を、開催地であるカナダ・モントリオールに派遣しました。
今回、その4名にインタビューを実施。OYWに参加したきっかけや、現地での学び、今後の目標などについて、たっぷりと語ってもらいました。
■ One Young World Summitとは
次世代リーダーの育成と国際交流を目的とした地球規模のサミット。190を超える国や地域から、18~32歳を中心とした若手人材2,000名以上が一堂に会し、気候変動から紛争解決まで、世界が直面する様々な課題の解決を目指して、ディスカッションやスピーチ、ワークショップなどを行う。2009年の世界経済フォーラムで宣言されたことが開催の大きなきっかけで、2010年2月にロンドンで第1回サミットが開催されて以降、開催国を変えながら、継続的に実施されている。
<参加者プロフィール>
■古屋 呂敏/Furuya Robin
俳優、フォトグラファー、映像クリエイター。京都府出身で、日本語と英語を話すバイリンガル。ハワイ州立大学やマサチューセッツ州立大学で学び、2019年5月よりアミューズに所属。ドラマ「恋をするなら二度目が上等」(MBS)、「VIVANT」(TBS)への出演や 写真展の開催など幅広い領域で活動中。
■塩川 智之/Shiokawa Tomoyuki
古屋の担当マネージャー。2016年アミューズに入社し、2017年より演劇ユニット TEAM NACSを7年ほど担当。現在は有坂心花、藤原大祐の若手俳優2名と古屋のマネージメントを中心に手がける。
■佐内 佑/Sanai Yu
ポルノグラフィティの担当マネージャー。2021年アミューズに入社。音楽分野のマネージメント業務に携わることを希望し、入社直後から現職。
■原田 怜歩/Harada Ramu
東京大学経済学部3年生。アミューズの一般公募枠でOYWに参加。幼少期から「マイノリティ×トイレ」の課題に関心を持ち、16歳で渡米。オールジェンダートイレなどの研究を行う。その後、コロナ禍発生により緊急帰国した後、株式会社UN&Co.を設立し、トイレマップアプリの開発や「トイレ白書」の発表などを手がけている。
世界を知り、視野を広げたい。OYW参加への想い
―― はじめに、皆さんがOYWに参加したきっかけを教えてください。
古屋:僕がOYWに参加しようと思ったのは、世界の同世代の方々と交流することで、視野を広げたかったからです。俳優やフォトグラファーとしてそれなりに長く活動してきましたが、この仕事では一般企業に勤めている方や社会問題の解決に真摯に取り組んでいる方と接する機会は少なく、自分の考え方や常識が現実と乖離していくように感じていました。そのため、このタイミングで改めて、世界の現状や社会で議論されていることを肌で感じたいと思い、OYWへの参加を決意しました。
原田:私も、カナダという多文化共生社会を自分の目で見て、現地の人と話をすることで、視野を大きく広げたいと思ったことがきっかけでした。ライフワークとして「トイレ研究」を続けていますが、大学で学ぶ中で、ここ最近は自分と同質な人としか会話をしておらず、考えや発想の幅が広がっていかないことが気になっていました。国籍、職業、年齢、性別に関係なく、多様な人と自分の研究について議論を深めてみたい。そう思ったことで、アミューズのOYW一般公募を知り応募しました。
塩川:僕と佐内は、上司の推薦がきっかけです。OYWに参加した同期からも「楽しかった」「勉強になった」といった前向きな感想をたくさん聞いていましたし、僕が担当している呂敏さんも参加するということで、せっかくなら一緒に行ってみようと思い、エントリーしました。
佐内:上司の推薦に加えて、マネージャーとして世界を知ることが、結果としてポルノグラフィティの今後の活動に役立てばいいなという想いもありました。また、日頃から社会課題や平和について関心を持っていたので、この機会に世界の人々の考え方に触れてみたいと思ったことも、参加を決めた理由の1つです。
英語、アイドル、多様性への考え方。異なる視点から得られた学び
――OYWに参加して得られたものや、特に印象的なできごとは何でしたか?
佐内: 国内でもよく言われていますが、「英語」というコミュニケーションツールの重要性を改めて実感しました。実は、僕はそれほど英語が流暢に話せないままOYWに参加したのですが、現地でポルノグラフィティのことを宣伝しようとしても、うまく伝わらないことが多かったんです。事前に英語の営業資料を準備して持ち歩いていたので、朝食や昼食の時間に近くに座った人に説明してみたのですが、深い話にはなかなか進まず、「へえ、かっこいいね」というあっさりした反応で終わってしまい、悔しい気持ちが募りました。
塩川:僕も英語に自信がなかったので、佐内くんの気持ちはよく分かります。OYW参加者との会話も、翻訳アプリやジェスチャーを使えばどうにかなるだろうと渡航前は楽観的に考えていたのですが、いざ現地に行ってみると、翻訳ツールを使っている人は一人もいなくて焦りました...。
佐内:今はAIが迅速に翻訳してくれるツールもありますが、OYWのような場では、ほんの一瞬のタイムラグが大きな差になってしまうんですよね。たった数秒、数十秒の沈黙で伝えたいことが伝わらなくなる。その場で使える言語を1つ持っていないだけで、こんなにもできることが限られるのかと、痛感した日々でした。
塩川:分かるなあ。あと、現地では環境問題や平和問題など、日本語で議論するにも相当な知識が必要な話題について、本当に多くの参加者が熱心にディスカッションしていたんですね。そんな様子を見て、いかに自分が日本で"平和ボケ"して暮らしていたのかを思い知らされました。
――塩川さんは現地でどんな工夫をされて過ごされたのですか?
塩川:環境や平和について話せないのなら、せめて自分が得意な領域で話を広げて、少しでも何かの気づきを会社に持ち帰ることができたらと思ったんです。そこで始めたのが、好きなアイドルグループについて尋ねるアンケート(笑)。僕はアイドルが大好きで、いずれアイドルグループを手がけたいという想いがあるので、世界では今どんなアイドルグループが人気なのかを知るべく、およそ100名の方に簡単な英語で話を聞いてみたんです。
――おもしろい取り組みですね。結果はいかがでしたか?
塩川:なるべく出身地域に偏りが出ないようにアンケートを取ってみたのですが、その結果、最も人気を集めたのはワン・ダイレクションでした。日本で暮らしていると、BTSが世界で一番人気のグループであるように感じますが、意外とそうでもなかったんです。日本から見える「世界」のイメージと、実際の世界には大きなギャップがあるのかもしれない。この気づきは、本当に大きな発見でしたね。
――原田さんは、現地でどのような学びや気づきを得られましたか?
原田:私はOYWの会場も含め、モントリオールでとにかくいろいろな方と話をしてみようと目標を立てて参加し、現地では2日間で200人以上の方と意見交換することができました。特に、カナダの現首相とお話しできたのは本当に印象深かったです。まだ話したことのない方かと思って気軽に声をかけたら、偶然それがカナダのジャスティン・トルドー首相とそのSPの方だったんです(笑)。思い切ってカナダの多様性に対する考え方について伺ってみたところ、「カナダでは多様な背景を持つ人たちを1つのルールや価値観で包含しようとはしていない。包含するとは、1つの方向性にまとめることだから。カナダはむしろ、多様な人々が無数にいることを容認する社会なんだ」という話があり、その言葉が深く心に刺さりました。
また、アフリカ出身の方と話をした際に、アフリカでは公衆衛生が整っていないという大きな社会問題があるため、そもそも「トイレ×マイノリティ」の問題を考える機会がない、という話も印象に残りました。日本だからこそ生じる悩みがあるというのは、新たな気づきでしたね。
私はOYWに「みんなが安心して使えるトイレとは何か?」という問いの最適解を探しに行っていた節があったのですが、多様な方の意見を聞くことで、考えを改めることができました。1つの解を目指すのではなく、多様な人が共生できる社会を目指すプロセスを大切にしたい。そう思えたことが、OYWに参加して得られた大きな学びでしたね。
>>OYWの振り返りはさらに続きます。古屋さんがOYWで得たもの、新たに描いた大きな夢とは?
▽世界で得られた学びや気づきが、新しい夢の原点に。アミューズ×One Young World、参加者インタビュー【後編】
https://www.amuse.co.jp/topics/2024/11/one_young_world.html
*社員の所属部署などの情報は2024年11月時点のものになります。