アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。今回は、代表作となった「ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』」をはじめ、これまでに数々の作品を送り出してきた舞台製作部にフォーカス。アミューズで舞台製作を手掛ける意義や理由、舞台を通じて届けたいもの、さらにはこの先に描いている夢について、「フラッシュダンス」や「MEAN GIRLS」など様々な作品をプロデューサーとして手掛けてきた舞台製作部・関詩織(せき しおり)にインタビュー。
今回は、[前編]として関自身のアミューズへの入社背景と舞台製作部の多岐に渡る業務について、[後編]ではアミューズ所属アーティストとの関わりや、6月に再上演を控えるミュージカル「FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜」について、そして舞台製作部が目指すモノづくりについて聞きました。
舞台作品づくりにおける全てを担う舞台製作部
その多岐にわたる業務と魅力
舞台製作部の立ち上げは2016年。きっかけはアメリカ・ブロードウェイで高い評価を博したミュージカル「キンキーブーツ」にアミューズが出資していた縁もあり、日本での上演ライセンスを当社が獲得したことでした。アミューズには三宅裕司(SET:スーパーエキセントリックシアター)や、岸谷五朗・寺脇康文(地球ゴージャス)といったアーティストが所属していたので、それまでも舞台製作に携わってはいましたが、ブロードウェイの大人気作品の日本版初上演を手掛けることを機に舞台を扱う独立した部署が設立されることとなりました。現在、プロデューサーとして数々の作品を手掛ける関がアミューズに入社したのは舞台製作部が新設され、「キンキーブーツ」が大成功を収めた直後のタイミングでした。
関「もともと海外のミュージカルが好きで、日本の大学を卒業してからアメリカの大学に編入したんです。2年間、演劇の勉強をして、その後、ニューヨークで1年、オフブロードウェイのプロデューサーのもとで働いていました。そうしたなか、アミューズが舞台製作部の社員を募集していると知ったんです。『キンキーブーツ』が日本で上演されるのはアメリカでもニュースになっていたし、今後も、海外のミュージカル作品をどんどんやっていこうとしている会社なんだな、と感じていました。あと、実はPerfumeが高校生のときから大好きで、彼女たちの活動を見ていて、きっとアミューズっていい会社なんだろうなと思っていたんです。もちろんやる気もすごく求められるし、大変なこともたくさんあるだろうけど、これも何かの運命かもしれないからと考え、面接を受けることに決めました」
ミュージカルの本場での勤務経験や英語力は舞台製作部の即戦力となり、入社してすぐに海外へ出向き、交渉の場につくといった重要な役割を担うなど、他の会社だったらできないスピード感で様々なことを任せてもらえることに驚いたと話す関。普通なら何年もキャリアを積まないとできないような貴重な経験に緊張しながらも、短期間で多くのことを学ぶことができたと入社当時を振り返ります。
そんな関に"舞台製作"の仕事内容について聞くと、実に多岐に渡る回答が返ってきました。
関「まずはどんな作品を上演するか企画を立てること、そして海外作品の場合はライセンスを獲得するための交渉、そして、演出や美術などを海外のオリジナル版をそのまま輸入するのか、日本オリジナルで作るのかなど細かな条件を調整した上での契約など、多岐に渡ります。また、上演するために最も重要なのは劇場のスケジュールを押さえることで、そのスケジュールに合わせて企画を立てることも少なくないですね。キャスティングやスタッフィング、稽古の準備や進行を図る一方で、広告・宣伝業務も並行して進めるなど、とにかく舞台を作るために必要な仕事を一手に担うのが舞台製作部です」
その他にも芸術的側面だけでなく予算管理といった実務的な視点も求められます。そしてプロデューサーの仕事は自身が担当する作品においてそれらひとつひとつの間に立ち、演者やスタッフ、クリエイター陣と密にコミュニケーションを取りながら様々な選択に対して最終的な責任を持つことが必要です。
関「プロデューサーは、大勢の人たちの真ん中に入って繋いでいく仕事なんです。いろんな人が動くなかでどう上手く調整をしていくのか、やり甲斐があるところでもあり、難しいところでもあって、もっと修行を積んでいかなくてはと日々痛感しています。まだ自分のなかでも何がベストなのかわかっていませんが、心がけていることと言えば、例えば実現が難しそうな演出でも"予算がないです、だから無理です"というだけで終わらせたくないとは思っています。予算がなくともどこまでなら許容できるのかをしっかりディスカッションしてお互いに納得した上で決めていく製作をしたいと思っています。ただ、そうもいかない場面ももちろんたくさんありますけどね(笑)」
また、当社所属のアーティストやクリエイターのキャリアにとってプラスになる作品を手掛けられることも当社に舞台製作部がある大きな意義のひとつ。同時にアーティストが持っている影響力によって社会にメッセージを発信していくことは、エンターテインメント企業としての使命であり、舞台はよりダイレクトにそれができる場になります。そして、海外ミュージカル作品はメッセージ性とエンターテインメント性を両立させた魅力的なものが多く、舞台製作部が手掛ける作品に海外ミュージカルが多いのにはそうした理由もあるそうです。
関「ゆくゆくは世界に発信できる日本オリジナルの作品を手掛けたいとも思っているのですが、海外の作品、特にブロードウェイの作品には、ジェンダーの差別をはじめ、LGBTQや人種差別というようなマイノリティにスポットを当てたものも数多くあり、そういったシリアスなテーマを優れた音楽と誰もが楽しめるストーリーに昇華して観ている人を楽しい気持ちにさせながら、しっかりと問題提起をして、何かしらのメッセージをその心に残す......そうした作品の影響力とアーティストの影響力との相乗効果で舞台を作って届けていけるのは、アミューズ舞台製作部の大きな武器だと思います」
*社員の所属部署などの情報は2023年5月時点のものになります。