アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。今回は、代表作となった「ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』」をはじめ、これまでに数々の作品を送り出してきた舞台製作部にフォーカス。[前編]に引き続き、これまで当社の様々な作品を手掛けてきたプロデューサーの舞台製作部・関詩織（せき しおり）にインタビューします。 [前編]では関自身のアミューズへの入社背景と舞台製作部の多岐に渡る業務についてお届けしてきましたが、この[後編]では、アミューズ舞台製作部だからこそ可能なアーティストとの関わりについて、6月に再上演を控えるミュージカル「FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜」について、舞台製作部が目指すモノづくりについて聞きました。
アミューズ人／舞台製作部 [前編] ―アミューズだからこそできる舞台製作とは―
アーティストの新たな才能を見出せる
舞台製作業務が内製化しているからこそ可能なこと
舞台製作部として関わってきたなかで特に印象深かったことを関に聞くと、2023年初めに上演した「MEAN GIRLS」にて、石田ニコルをレジーナ役にキャスティングしたことだと語ります。関がこの役を演じてもらいたいと思ったのは2019年の「FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜」初演の舞台に出ていた石田ニコルを観たことがきっかけだったそうです。
関「日本のミュージカル界ってどうしても可憐な乙女タイプと言いますか、正統派ヒロイン型の俳優が求められることが多いように思います。彼女の様なビジュアルを持ち合わせながらしっかりと歌えて、かつ女性の強さと存在感を発揮できる美女ってなかなかいないなと感じたんです。もともと私は『MEAN GIRLS』を日本で上演したいと考えていて、レジーナという役柄は高校のカーストトップに立つような女性なんですけど、その役にピッタリくる俳優がなかなか浮かばなかったんですよね。そんなときに『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』で演じていた石田ニコルの演技を見て"彼女ならレジーナができるのでは！"と。その瞬間から私のなかの『MEAN GIRLS』がスタートしたんです。その後、たまたまですけど、『MEAN GIRLS』の上演よりも前に私がプロデューサーとして手掛ける作品で石田ニコルに合う役があったので、彼女の担当マネージャーに相談して出演してもらいました」
当時、7年ぶりにミュージカルに再挑戦することとなった石田ニコルの演技を見て「レジーナ役にピッタリだ」とひらめくと同時に、ミュージカル俳優としてのポテンシャルを確信したという関。そのときはまだ「MEAN GIRLS」のライセンスは取得していなかったにも関わらず、レジーナ役に焦点を当てその実現に向けて動き出し、逆算して石田ニコルを「フラッシュダンス」（2020年）、「IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ」（2021年）と立て続けに起用し、マネージメントとも協力して舞台への道を切り開いていきました。
その結果、石田ニコルは当社の舞台作品だけでなく、劇団☆新感線の舞台「薔薇とサムライ2 ―海賊女王の帰還―」（2022年）への出演を果たすまでに。数々の経験と手応えを持って「MEAN GIRLS」での出演も好評を博すこととなります。間近で所属アーティストの才能を見出し、マネージャー同様にアーティストの活動をバックアップできるのも当社の中に舞台製作部があるからこその醍醐味かもしれません。
関「もちろん、彼女自身がものすごく努力されたということが一番大きいですが、たしかにアミューズならではのエピソードかもしれないですね。外部から参加してくださった俳優の方からも、よくアミューズは"製作の現場が家族的だった"と言っていただくことも多くて。あまり意識してはいなかったんですけど、それってマネージメント会社が手掛けているからなのかな、と思いますね」
日米のクリエイターのタッグによって誕生した作品が再上演
「FACTORY GIRLS～私が描く物語～」
そんな舞台製作部が6月から新たに手掛けるのが、先のエピソードにも挙がった「FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜」の4年ぶりの再上演です。ブロードウェイで新進気鋭の作曲家コンビであるクレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーによって作られたパワフルなロックサウンド満載の原案をもとに、日本で幅広く活躍する演出家・板垣恭一氏が脚本・歌詞・演出を担って生まれた、この日本初演のオリジナルミュージカルは2019年の初演で「第27回 読売演劇大賞」優秀作品賞を受賞。ブロードウェイの才能とタッグを組んだ日米合作となったことも話題を呼びました。
関「プロデューサーとして私がこの作品に関わるのは今回からなのですが、初演を横で観ていたときから日本でこうしたミュージカルが作れることはすごいことだなと思っていました。しかもロックを基調にしたキャッチーな音楽で、ここまでストレートに女性の権利を謳った作品は日本だとなかなかないと思います。世界中で＃ME TOO運動が起こり始めた2019年当時より、今はもっと日本のフェミニズムも進んできているはずですし、そんなタイミングに今一度、多くの方に観ていただけるのがとても意義があると思うので、しっかり発信していきたいですね」
そもそも「FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜」の誕生は舞台製作部が女性を主役にした、もっと女性が力をもらえるような舞台を作りたいと海外作品をリサーチするなかで今作の原案に出会ったことが発端でした。ブロードウェイのとあるプロデューサーが、"まだデベロップメント中だがいつか陽の目を見るかもしれない有望株"としてブログに紹介していたリストのなかに今作があり、いくつかアップされていた楽曲のデモを聴いてみたところ実に手応えを感じたといいます。まだプロット（ストーリーを要約したもの）の段階だった脚本は、交渉により当社舞台製作部が手掛けることとなり、幾多の紆余曲折を経て生まれたのがこの日米合作・日本発オリジナルミュージカルです。
女性の権利をめぐり、19世紀半ばのアメリカで実際に起こった労働争議をモチーフに編まれたエネルギッシュな物語は、当社所属の柚希礼音が演じる主人公サラ・バグリーと、同じくソニン演じるハリエット・ファーリーの闘いと友情も見どころのひとつです。
関「初演からの続投で対照的だけれど同じ信念を持つ二人の役柄を柚希礼音とソニンが本当に説得力を持って演じています。それを観るだけでも感じていただけるものは大きいと思いますし、ぜひ多くの方にご覧いただきたい作品です」
アミューズだからできる舞台製作を
当社の強みを生かしたモノづくりをしていきたい
作品とアーティストの力で多くの方にメッセージを届けられるような舞台をこれからも作りたいと今後の抱負を語る関。海外ミュージカルはもちろんのこと、日本オリジナル作品やストレートプレイなどいろんなジャンルに携わっていきたいと熱い想いをのぞかせます。
関「個人としては舞台に足を運んでくださるお客様の層をもっと厚くしていきたいですし、そこに関してはアミューズだからできることもきっとたくさんあるだろうなと思っているんです。アミューズならではのコンテンツや、老若男女問わず幅広い方々に認知いただいているアーティストが多く所属している会社だからこそ、そういう強みをうまく舞台に繋げて、舞台に馴染みのないような若い人たちにも観てみたいなと思ってもらいたいですね」
最後に舞台製作の仕事に興味のある方や志している方へ向けてアドバイスを聞きました。
関「"好きなことを突き詰めること"ですかね。このアミューズという会社自体がそういう人たちの集まりですし、舞台製作部なんて筋金入りのオタクばかりですから（笑）。舞台製作に限りませんが、仕事をやっていれば辛いことや大変なこともたくさんあります。でも、それを上回るほどのたまらないような素晴らしい瞬間が返ってくる場所でもあるんです。それがどんどん次に繋がっていく原動力にもなると思うんですが、そのためにも何かひとつ、これだけは誰にも負けないってくらい好きなものを持っていることはすごく大事ですね。それがあればきっと、やり甲斐を持って仕事に臨めるんじゃないかなと思います。まずは、アミューズが手掛ける舞台をぜひ直接肌で感じていただければと思います！」
＊社員の所属部署などの情報は2023年5月時点のものになります。