アミューズの財産である「人」や「モノ・コト」などにフォーカスするTOPICSオリジナル企画。今回は、当社で映像作品の企画製作や出資参加を担う映像企画製作部にフォーカス。[前編]では映像企画製作部 中澤元(なかざわ げん)にインタビュー、配属のきっかけや部署が担う業務についてお届けしました。 [後編]では新日本プロレス創立50周年記念企画として製作され、10月6日に全国公開を控えるドキュメンタリー映画「アントニオ猪木をさがして」について、今作のプロデューサーである映像企画製作部 部長 筒井竜平(つつい りょうへい)にインタビュー。企画立ち上げから作品づくりについて聞きました。
▽アミューズ人/映像企画製作部 [前編] ―様々な個性や才能を活かせるアミューズならではの映像企画製作とは―
https://www.amuse.co.jp/topics/2023/10/post_238.html
新日本プロレス創立50周年
映像作品の企画立ち上げの発端とは
新日本プロレスの創設者であり、また、プロレスのみならず、様々な分野に影響をもたらす存在として時代を牽引し続け、昨年10月に惜しくも旅立たれたカリスマ・アントニオ猪木。多くの人の心を惹きつけ、時には賛否両論を巻き起こしては、その闘いで、言動で、日本中を元気にしてきたその偉大な足跡を映像作品として昇華したのがドキュメンタリー映画「アントニオ猪木をさがして」です。
筒井「2016年からアミューズは新日本プロレスさんと業務提携しておりまして、その関係性で持ち込まれた企画だったんです。もともとは昨年、新日本プロレスが創立50周年を迎えるにあたり、創立者である猪木さんに、新日本プロレスの名誉会長として帰ってきてもらう、という話が進んでいまして。その流れで50周年事業として映画を製作するという構想も持ち上がり、そこからアミューズにお話をいただいたというわけです」
言葉と音楽の二つが切り口に
"人間・アントニオ猪木"を語るドキュメンタリー作品
企画立案を任された筒井は、とにかく関連書籍を読み漁り、プロレスラー時代のアーカイブ映像などをはじめ観られるものは片っ端から観ていくことで企画の糸口を探っていきました。
筒井「最初は自伝的なドラマを映画にするのはどうか、という案も出たんです。でも、どうしても誰かが猪木さんを演じるというイメージを持つことが出来なかったんです。猪木さんは、身体能力も秀でていますし、何よりあの特異なカリスマ性を纏って演じていただくことの難しさ。そして、そこを目指すことが正解とはどうしても考えられなかったんです。だったらどんな映画がいいのか...猪木さんに関連するものを可能な限り、観たり読んだりしていくなかで、ふと、猪木さんが発してこられた言葉に注目したら面白いんじゃないかと思ったんですよね。それともう一つ、猪木さんの入場テーマ曲でもあった『炎のファイター ~INOKI BOM-BA-YE~』に注目したんです。猪木さんを知らない人でもあの曲は知っているはずだし、聴けばきっと無条件にアドレナリンが出る。"言葉"と"音楽"の二つを切り口にすることで、猪木さんのコアファンはもちろん、猪木さんを知らない若い世代にまで届くかもしれないと考え、企画書を作っては直し作っては直し、詰めていったんです」
プロレスラーだけでなく、実業家、政治家としての顔も持つアントニオ猪木さんですが、若い方のなかにはバラエティ番組などで"闘魂注入"している姿や、選手時代からの"1、2、3、ダー!"の掛け声で場を盛り上げているイメージが強いという方もいるかもしれません。その生き様は徹頭徹尾、バイタリティに溢れていました。
筒井「やっぱり猪木さんの生き様って、たくさんの人を巻き込んで勇気づけたり、幸せにするパワーに満ちていると思うんですよ。ここ数年、世の中はコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻のような事態が起こったりして、みんな、物凄く閉塞感を感じていると思うんですね。5年後10年後を思い描くことも難しいような今の世の中において、猪木さんの生き様に触れることは非常に意味があるんじゃないかと思うんです。なにせ"元気ですか!"の一言だけで空気をガラリと変える力を持っている方ですから。調べれば調べるほど魅力的な人ですし、本当に突き抜けた稀代のスターですよね。その半端じゃないエネルギーを伝えたいと思って企画書を練り上げている間に、とても残念なことにご本人が旅立たれてしまい...。しかし、企画を止めることなく、完成に向けて関係者が一丸となって突き進みました」
ドキュメンタリーといっても、その内容は単なるドキュメンタリーの枠に収まりません。棚橋弘至、オカダ・カズチカ、海野翔太ら現役レスラーや、愛弟子の藤波辰爾、藤原喜明、芸能界からも有田哲平、神田伯山、安田顕ら、アントニオ猪木に影響を受け、猪木を追い続ける様々なジャンルの人物が"旅人"として登場し、場所も視点もそれぞれに"人間・アントニオ猪木"を語るドキュメンタリーパートと、80年代、90年代、2000年代のそれぞれにスポットを当て、"アントニオ猪木がいた時代"の人々を描いた短編映画パートで構成され、さらには貴重なアーカイブ映像やスチールを散りばめた、エンターテインメント作品となっているのです。
筒井「猪木さんとマサ斉藤さんが1987年に対戦した有名な"巌流島の戦い"というとんでもない試合があるんですけど、今回、神田伯山さんにはストレートインタビューとは別に、実際に巌流島に行って、リングを模した舞台で講談をしていただいてるんですよ。棚橋弘至さんには知る人ぞ知る"猪木問答"が勃発した札幌市の北海きたえーるを貸し切って、そこに来ていただいて撮影をしたり、オカダ・カズチカさんの撮影には猪木さんの引退試合の会場だった東京ドームを貸し切ったり。生っぽさだけでなく、撮影する場所や導入部分には猪木さんの生きてきた歴史を感じさせる場所を選び、キチンと魅せることを意識しました。短編映画パートにしても市井(しせい)の方々にもリサーチした情報をもとに、時代を超えて、あちこちにたくさんあったであろう、猪木さんにチカラをもらった人たちの物語を描いています。猪木さんの生き様にリスペクトを込めた、この作品ならではのこだわりを感じてもらえたら嬉しいですね」
今作の企画製作に当たる過程でアントニオ猪木の魅力にどっぷりと浸かったという筒井もまた"闘魂注入"された1人と言えるのではないでしょうか。映画「アントニオ猪木をさがして」はプロレスファンの皆さん、アントニオ猪木ファンの皆さんはさることながら、現代を必死に生きている老若男女すべての人たちにとって、今日を乗り切り明日を迎えるための闘魂=勇気と希望を与えてくれる作品となるに違いありません。
*社員の所属部署などの情報は2023年10月時点のものになります。